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生成AIは、法曹界を完全に変革する可能性を秘めています。AIを導入していない法律事務所は、クライアントが期待するようなデータ主導の洞察や分析の深さを提供するのに苦労することになるでしょう。法律事務所や企業法務部は...
企業が果たすべき社会的責務としてコーポレートガバナンスの構築と推進があり、日本政府は2015年に策定した「コーポレートガバナンスコード(CGコード)」を遵守するよう各企業に求めています。CGコードを有機的に準用するためには...
海外に進出する日本企業の増加に伴い、さまざまなトラブルが報告されています。企業のグローバル化による負の象徴ともいえるこれらの諸問題は、近い将来に市場を世界に求めようとする企業にとっても決して他人事ではありません...
企業のグローバル化が加速化する現代のビジネス社会では、人とモノが国境を超えて往来する事象が、もはや当たり前という時代になってきています。今後もこの傾向が進んでいくことは確実とされ「ビジネスに国境なし」という状況にまで突き進んでいくことでしょう...
多様な問題をかかえる国際社会において、いま急速に強まってきているのが「ビジネスと人権」という課題です。今なお、企業で働く人々の人権侵害が世界各国で起きており、それらが深刻な問題として国連で議論されています。特にグローバル企業にとっては、国際問題に発展しかねない労働者の人権問題について、どのような対応をとればよいのか、真剣に考えて対策をとらなければならない状況となっています。日本のグローバル企業は、特にシビアな人権侵害が問題になるアジアの国々で事業展開をしている企業も多く、現地でどのような問題が顕在化しているのか、どのように対処するべきなのか、一層真摯に向かい合わなければなりません。
レクシスネクシス・ジャパンでは「アジア法務の思考回路」シリーズの一編として『いよいよ実務課題となった「ビジネスと人権」』というタイトルのホワイトペーパーを刊行しました。今回は同書の内容を見出しごとに紹介します。同書の著者は「AsiaWise法律事務所」の代表弁護士であり、アジア諸国との国際ビジネス上の法務と実務に詳しい久保光太郎先生と、同事務所所属弁護士の足羽麦子先生です。
日本では、「ビジネスと人権に関する行動計画に係る関係府省庁連絡会議」において「国別行動計画(NAP)」が2020年10月に策定されました。2011年に国連人権理事会が採択した「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえ、NAPでは、日本政府が取り組む各種政策の他、企業に対し、企業活動における人権への影響の特定や情報共有を行うこと、人権デューデリジェンスの導入促進の期待等が表明されています。
第1章では、国連人権理事会による「指導原則の3つの柱」の内容を図表で示し、今後日本政府がNAPに基づいて取り組むべき方策について論述されています。
国が民間企業に対して人権保護を要求するに至った経緯について、第2章では3つのテーマ別に解説されています。
第1のテーマは、これまで広く真正面から取り上げられる機会が少なかった企業活動における「人権」についての論考です。「民間企業がなぜ人権を保護しなければいけないのか」という、人権に対する企業責任について問題提起がなされています。
企業と人権というテーマが顕著となったのは、1990年代以降に多国籍企業による発展途上国での労働問題がきっかけでした。第2のテーマとして、企業が人権と向き合う背景について、以下の3つの項目別に解説されています。
1990年代後半になると、多国籍企業による発展途上国の労働者に対する人権軽視の状況が強く問題視されるようになってきました。ここでは、これらの実態について、実例を挙げて紹介されています。
企業業務のデジタル化が加速するにつれてプライバシーや個人データに対する新たな侵害が懸念されています。またSNSの普及によって個人の告発が瞬時に世界中に拡散される時代です。このような新しいテクノロジーの登場によって「ビジネスと人権」が企業の大きなリスクになり得ることが解説されています。
さらに、法律やルールを守ればよいという消極的な態度ではなく、人権を尊重する企業であるというクリーンなイメージを消費者に認識してもらうことが企業の発展に寄与するというルールの役割の変化について説明されています。
サプライチェーンの下請け業務が多いアジアの国々では、労働者に対する人権問題が多発しているのが現状です。第3章では、アジア各国における労働者の人権保護の重要性について、現実に起きている事例の構造的問題点と日本企業との関わりについて解説されています。
第4章では、ケーススタディとして4つのケースを想定し、それぞれのケースについて解説を行っています。
第1のケーススタディは、人権保護体制の構築についてのヒントとなる内容です。人権保護体制の構築と実行に向けて、4つの重要項目に区分して解説されています。
「ビジネスと人権に関する国別行動計画」に準じて、民間企業の法務部としてなすべきことはなにかという課題がケースとして想定されています。
ここでは、民間企業が人権擁護体制を構築する際に必要なチーム体制構築のポイントが挙げられています。担当チームを構成することはもちろん、全社を挙げての体制構築の必要性についても言及されている内容です。
政府が「国別行動計画」で挙げられた「企業に期待される3本の矢」に基づく行動指針として、企業側が策定すべき「人権方針」について論考されています。
ここでは、企業が人権問題を起こさないための方策として「人権デューデリジェンス」について解説されています。民間企業各社は、自社特有の人権リスクを正確に把握した上で、適正な「人権デューデリジェンス」を実施することの重要性に言及した内容です。
企業は、自社内で人権問題が発生した場合の救済手段についても策定しておかねばならないことが述べられています。
日本のグローバル企業による海外のサプライチェーンの管理上の問題について、ケーススタディを挙げて、3つのポイントについて解説が施されています。
第2のケーススタディは、アジア某国のサプライヤーで起きた人権問題について、その告発文書が国際的な人権保護NGO団体から日本本社に届いたという想定。このケースでの対応策として以下の3項目が提起されています。
海外のサプライヤーに対する人権問題の行動規範を盛り込んだ「調達ガイドライン」の策定の必要性が、その内容の説明と共に解説されています。
海外のサプライヤーと契約を締結するにあたり、人権問題についても配慮の上で契約条項を定めるべきことについて言及しています。
人権保護NGO団体等から告発されることは、企業にとっての「有事」ともいえるでしょう。それではこのケースのような「有事」の際に、当事者となった企業はどのように対応すべきなのか、その内容について解説されています。
現代企業には「苦情処理にどう対応するか」という重要な課題があります。ここでは、一つのケーススタディをベースに「苦情処理メカニズム」について解説されています。
コンプライアンス業務の一環として、内部通報窓口を設置している企業が、新たに人権保護専用の窓口を作ることを検討しているケースです。
現状の内部通報窓口により広範な対応を取る必要がある可能性について言及した上で、外部リソースの活用の提言と、その有効性などについて述べられています。
企業にとって「ビジネスと人権」というテーマについては、以前から「コンプライアンスの重要性」と共に語られてきました。そして今や「ビジネスと人権」は、単なる企業スローガンではなく、各企業がいかに実務として対応するか、という時代に入っているといってよいでしょう。
「アジア法務の思考回路」シリーズ『いよいよ実務課題となった「ビジネスと人権」』では、特に注意すべきアジア圏でのビジネスにおける「ビジネスと人権」の課題について、ケーススタディを交えながらわかりやすい内容にまとめられています。グローバル企業の法務部門担当者や現地管理者にとっては必読といえる中身の濃い内容になっておりますので、この機会にぜひご一読ください。
注釈:「【アジア法務の思考回路】いよいよ実務課題となった「ビジネスと人権」」はLexisNexisビジネスロー・ジャーナル2021年1月号に掲載された連載記事です。解説の内容は掲載時点の情報です。
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