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企業が果たすべき社会的責務としてコーポレートガバナンスの構築と推進があり、日本政府は2015年に策定した「コーポレートガバナンスコード(CGコード)」を遵守するよう各企業に求めています。CGコードを有機的に準用するためには...
海外に進出する日本企業の増加に伴い、さまざまなトラブルが報告されています。企業のグローバル化による負の象徴ともいえるこれらの諸問題は、近い将来に市場を世界に求めようとする企業にとっても決して他人事ではありません...
企業のグローバル化が加速化する現代のビジネス社会では、人とモノが国境を超えて往来する事象が、もはや当たり前という時代になってきています。今後もこの傾向が進んでいくことは確実とされ「ビジネスに国境なし」という状況にまで突き進んでいくことでしょう...
企業が果たすべき社会的責務としてコーポレートガバナンスの構築と推進があり、日本政府は2015年に策定した「コーポレートガバナンスコード(CGコード)」を遵守するよう各企業に求めています。CGコードを有機的に準用するためには、会社の中枢たる「取締役会」の役割が重要であり、取締役会の運営を推進する事務局担当者が果たすべき業務の重要度も無視できません。しかしながら、具体的な業務内容が分からないという事務局担当者も多いことでしょう。
そこで今回、アーカイブスシリーズ『事務局担当者から見た取締役会運営の現在とこれから』と題する、上場企業の取締役会事務局の担当者5名による座談会形式のホワイトペーパーを紹介します。座談会では、5名の実務担当者が今の問題点を挙げながら、これからの取締役会のあり方についてそれぞれが忌憚のない意見を出し合っています。
座談会の出席者の所属企業と特徴は以下の通りです。
A氏:監査役会設置会社。古き良きメーカーとして堅実に対応。
B氏:監査役会設置会社。オーナー企業ゆえ、ガバナンス改革に理解が得られにくい面も。
C氏:監査等委員会設置会社。グローバル展開が活発であり、経営の透明性を重視。
D氏:指名委員会等設置会社。取締役会運営の効率化について経営陣の理解は得られやすい。
E氏:監査役会設置会社。歴史が浅く、伝統に縛られないシステム系企業。
本記事では、座談会の議事録をまとめたホワイトペーパーの要旨を紹介します。
『事務局担当者から見た取締役会運営の現在とこれから』の第1章では、政府が策定したCGコードに対して、座談会出席のメンバーがそれぞれの職場でどのように対応しているのか、その実情について語り合っています。
出席メンバーからは、CGコードが会社に与えた影響度の高さについての意見が寄せられました。また、政府が企業に求める改革の目的と意義についても各メンバーからの意見が語られています。
CGコードの導入と実行について、取締役会はどのように対応すべきか、その正常なあり方をテーマとする議論です。これからCGコードの導入を検討している企業の取締役会の実務担当者にとっては大いに参考となるでしょう。
企業が実際にCGコードに対応するには、コーポレートガバナンスをどの部署が担当するかという現実的な課題があります。この課題点について、各メンバーが所属する会社の実態が紹介されており、担当部署は「総務部」「法務部」「経営企画部」「秘書室」など各社の事情によってさまざまなことがわかります。
そして各メンバーからは、自社の取り組み方が語られており、主要部署間の連携の必要性や総務系と法務系との役割分担などにも触れられています。
また、経済産業省策定の「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」にて、コーポレートガバナンスの対応を一元的に統括する部署・担当者の配置が提案された件についても、現場で実務にあたっているメンバーから、リスク面も含めた意見が述べられています。
第2章では、取締役会における運営実務についての現状と工夫がテーマです。項目ごとに各メンバーの具体的な実務内容が明かされているので、取締役会の運営方法を知るために参考になることでしょう。
ここでは、取締役会での事務作業について、各メンバーが所属する会社が、実際にどのような手順で実務を進めているのかが具体的に語られています。
取締役会の開催頻度は、各社の事情によりさまざまであることを各メンバーが語っています。そして、開催がなぜその間隔が妥当とされているのか、それぞれの会社の実情を交えて説明されています。
ここでは、各メンバーから取締役会が開催されるまでの具体的スケジュールが報告されています。これから取締役会をスタートする会社や、自社との相違点に興味がある運営担当者には参考になるでしょう。
取締役会の議案の順序についても、各企業の業務内容や職務形態によってそれぞれに工夫が凝らされていることが分かる内容です。会議をよりスムーズに、かつ実りある内容にするために、各社ともに知恵を絞って取締役会に臨んでいることが分かります。
CGSガイドラインでは、取締役会の効率化・省力化のために議案書の電子化が紹介されています。電子化すなわちペーパーレス化という課題について、比較的高齢の役員が多い企業では、具体的にどのように取り込んでいるのか、各メンバーからそれぞれの自社の方策が語られています。
また同時に、電子化によるセキュリティ面でのリスクなどの意見も述べられています。
取締役会に上程される定性基準や付議基準について、各社がどのように定めているかについての議論です。各メンバーともに、これらの判断については難しい問題を孕んでいることが吐露されており、座談会では現場での実務経験に沿ったさまざまな意見が述べられています。
取締役会議の議事録は閲覧対象となるので、それなりの運用が求められます。ここでは、取締役会での議事録作成の実務について各メンバーの所属会社でのやり方について説明されています。
議事録のまとめ方として、討議内容を箇条書きにまとめる方法と、参加者の発言内容を具体的にまとめる方法が紹介され、各メンバーの所属会社がどの形式をとっているのか、経緯とあわせて語られています。
第3章は、社外役員の対応がテーマです。社外役員に対し、どのように接するのかという点は、取締役会を正常に運営するためにも大切なので、各メンバーによる報告は参考になることでしょう。
社外役員への対応について、サポートや当事者のみの会合、そしてステークホルダー(利害関係者)との対話という3点に絞って語られています。
社外取締役が自社の情報を理解するために実施されている方策について、各メンバーがそれぞれの立場で発言しています。面談・レクチャー・ミーティングなど、その方法と実際の取組み方には、各社なりの特色があることが分かります。
CGコードでは、社外取締役による監督を実効的なものにする取組みの例として「独立社外者のみを構成員とする会合を定期的に開催すること」が挙げられています。すなわち、会社内の役員や社員を除き、社外取締役だけの会合を定期的に実施するという取組みです。
これに対し、必要性と実効性についての意見がメンバーの一人から出され、各メンバーがそれぞれの立場で意見を出し合っています。
社外取締役には、ステークホルダーの意見を取締役会に反映させることが期待されているともいわれています。この点について実際はどうなのか、各メンバーから自社の実情と課題点が語られています。
株主総会で社外取締役が「社外から見た会社の印象」を語ったという裏話などもあり、社外取締役が機関投資家などのステークホルダーと交流することの意義についての発言は興味深い内容です。
社外役員の選任などについても、取締役会の実務担当者にとっては大切な業務です。ここでは「選任」「再任」「報酬」の3項目について、各メンバーが報告しています。
社外役員の選任に関して、各メンバーが自社での方法を語りながら、失敗例にも触れているため、選任の際の参考となる内容です。
CGコードでは「取締役候補の指名を行う際の説明」を求めています。この点についても、各メンバーが自社のやり方について語る内容となっていますが、現実に個人の再任理由を会議の場で公表する難しさもあり、各社なりの方策が興味深い内容となっています。
CGSガイドラインで紹介されている「報酬政策の検討ステップ」は、実際に運用されているのか、これから役員報酬の規約を作成するという企業の実務担当者にとっては、その実情が知りたいところでしょう。
座談会では、各メンバー所属の会社が役員報酬をどのように決めているのか、投資家による見方も含めて、役員報酬の実態が明かされています。
取締役会の評価について、どのような形式でなされるのが良いのか、評価制度の内容や運用について、各メンバーによる現場からの意見が交換されています。
評価の方法は異なっていても、まずは実行しながらPDCAサイクルを回していくことの重要性などが指摘されています。
日本の大企業に多い「相談役」や「顧問」という存在に対しては、今後、CGSガイドラインに改革の必要性が盛り込まれるのではないかとの意見がメンバーから出されています。
さらに相談役・顧問制度の役割や必要性、各種対応について各メンバーから意見が述べられています。
CGコードでは、社長やCEOが退任後も影響力を維持するために、不透明な後継者選任を防ぐ目的で、取締役会が最高経営責任者の後継者計画を「監督」することを求めています。
取締役会の実務担当者にとっては対応が難しい件ではありますが、各メンバーからは建設的な意見が交わされています。
今回の座談会は、格式ばったものではなく、事務局担当者が取締役会の課題点とこれからのあり方について、各メンバーが忌憚のない意見を交換し合うという意図で行われました。
企業のステータスが上がり社会的責任が重くなるにつれて、世間からは「CGコードを有効に運用しているか」という監視の眼も強くなることでしょう。
レクシスネクシス・ジャパンによる取締役会の事務局担当者5名による座談会は、当記事で紹介した内容でアーカイブスシリーズ『事務局担当者から見た取締役会運営の現在とこれから』と題するホワイトペーパーにまとめられています。インターネットにて簡単にダウンロードしてすぐに読めますので、この機会にぜひご一読ください。
注釈:アーカイブスシリーズ「事務局担当者から見た取締役会運営の現在とこれから」はLexisNexisビジネスロー・ジャーナル2017年6月号に掲載された連載記事です。解説の内容は掲載時点の情報です。