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法律事務所のリーダーたちは、法律分野向けに開発されたAIツールであるリーガルAIの採用を増やしているが、いかなる画期的な技術もそうであるように、克服しなければならない懐疑的な見方も 存在しています 。...
生成AI (Gen AI) ツールの出現は、私たちの業界におけるエキサイティングな前進ですが、同時に、この新しいテクノロジーに慎重にアプローチすることも重要です。弁護士が 弁護士補助 やパラリーガルの成果物を監督するのと同じように...
2023年10月に Lexis+ AI が米国で提供開始され、日本においても2024年3月に販売開始されたことは、法律業界における画期的な出来事であり、法律専門家のためにレーニングされた生成AI ( Gen...
現在、各国から廃棄されるプラスチックのゴミが深刻な海洋汚染の要因となっています。今や、廃プラスチックを削減し、循環型社会を構築することが世界的な環境問題として取り上げられる時代なのです。日本では、廃プラスチックの削減と循環型社会の実現に向けた新たな法律として「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」が令和3年6月に公布されました。
令和4年に迫る同法の施行を前に、レクシスネクシス・ジャパンでは「プラスチック資源循環促進法」の概要を網羅したセミナーを開催しました。そこで今回は、同セミナーの内容について紹介します。セミナー講師は、有限会社洛思社の代表取締役であり同時に環境コンサルタントとして活動されている安達宏之氏です。安達氏は、環境経営部門チーフディレクターとして勤務する傍ら「環境経営」「企業向け環境法」をテーマに、執筆、コンサルティング、審査、セミナー講師など精力的に活動されています。また、上智大学法学部、十文字学園女子大学の非常勤講師でもあり、『図解でわかる!環境法・条例 ~基本のキ(改訂版)』(第一法規・2020年)等の多くの著作でも知られている環境問題のエキスパートです。
日本で「プラスチック資源循環促進法」が誕生した背景には、地球規模での海洋汚染の拡大という深刻な環境問題があります。各国から海洋に廃棄されるプラスチックのゴミは、世界的な人口増加に伴い増え続けています。今や北極洋・南極洋でもマイクロプラスチックが観測されるほどの危機的な現状です。増加する廃プラスチックは「生態系を含めた海洋環境への影響」「船舶航行への障害」「観光・漁業への影響」「沿岸域居住環境への影響」など、諸問題が多岐にわたっています。廃プラスチック対策は早急に解決すべき世界的な課題なのです。
2018年6月に発表されたUNEP(国連環境計画)の報告書「シングルユースプラスチック」によれば、日本の人口一人あたりのプラスチック廃棄量は諸外国に比べて多く、米国に次いで世界で2番目となっています。 このような状況下では、日本も、廃プラスチック対策の手段を厳格に講じる必要に迫られているのが現実です。「プラスチック資源循環促進法」は、廃プラスチックを削減し、循環型社会を実現するために制定された新しい環境法と位置付けられるでしょう。
日本における「環境法」は、平成6年8月に全面的に施行した「環境基本法」、そして個別の規制を定める「資源有効促進法」や「廃棄物処理法」、さらに物品の特性に応じた規制を定める「容器包装リサイクル法」や「家電リサイクル法」、「食品リサイクル法」などがあります。
令和3年6月の公布から1年以内には施行される見込みである「プラスチック資源循環促進法」は、既存法律の改正法などではなく、新しい環境法として誕生した新法で、プラスチックという素材自体に着目した包括的な法制度です。同法の施行までは、他の法律と同様に「政令」「省令」「告示」等の下位法令が制定される段取りになっており、それらの法令が出揃う令和4年6月までには規制の全体像が明らかになることでしょう。
「プラスチック資源循環促進法」が誕生した背景には、海洋プラスチックごみ問題の他にも、気候変動問題や諸外国の廃棄物輸入規制などの問題も絡んでいます。また、日本国内でのプラスチックの資源循環の重要性も以前から指摘されており、政府は令和元年5月に「プラスチック資源循環戦略」を策定し、立法の具体化に向けて舵を切りました。
そして、令和3年1月の中央環境審議会による「今後のプラスチック資源循環施策のあり方について」という意見具申を受けて今回の新法公布に至ったという経緯があったのです。
「プラスチック資源循環促進法」の大きな目的は「プラスチックに関する包括的な資源循環体制の強化」にあります。すなわちプラスチックごみの削減を実現するために、製品の設計からプラスチック廃棄物の処理に至るまでの過程をトータルに規制する法律になっているのです。
環境問題への課題として提言されていた「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」に新たなRとしての「リニューアブル(再生可能)」が加わった”3R+Rnewable”がプラスチック資源循環促進法を機能させる重要なキーワードとなることでしょう。
「プラスチック資源循環促進法」では、プラスチックのライフサイクル全般での”3R+Rnewable”により、サーキュラーエコノミー社会への移行を加速することを目指しています。その実現のために立法された同法の重要テーマは以下の3項目です。
「プラスチック資源循環促進法」では、プラスチックを排出する事業者に対し、次のような措置事項を求めています。また同時に、それらの措置事項に及ぶ国側の方策も規定されています。
設計・製造分野【環境配慮設計指針】
製造業者が努めるべき環境配慮設計に関する指針を策定し、指針に適合した製品であることを認定する仕組みが設けられ、国が率先して認定製品を調達し、設備への支援が実行されます。
販売・提供分野【使用の合理化】
小売業・サービス事業者などワンウェイプラスチックの提供業者が取り組むべき判断基準が策定されます。
排出・回収・リサイクル分野【市区町村の分別収集・再商品化】
プラスチック資源の分別収集を促進するため、容器包装リサイクル法ルートを活用した再商品化を可能にするため、各自治体と再商品化事業者が連携して行う再商品化計画が作成されます。
【製造、販売事業者等による自主回収】
製造、販売事業者が製品を自主回収・再資源化する計画が作成され、認定事業者は廃棄物処理法の業許可不要になります。
【排出事業者の排出抑制・再資源化】
国の指導・助言により、排出事業者が排出抑制や再資源化等の取り組むべき判断基準が策定され、認定事業者は廃棄物処理法の業認可は不要になります。
「プラスチック資源循環促進法」が各事業者に及ぼす影響は大きいものがあります。同法が各事業者に課している努力義務や規制について、以下に紹介しましょう。
1. メーカーへの環境配慮設計指針
指針の構成
1. プラスチックの使用制限、代替素材活用など、設計又は部品・原材料の種類の工夫に関して取り組むべき事項
2. その他製造業者等が配慮すべき事項
指針では「プラスチック使用製品製造業者等は、製品の設計について主務大臣の認定を受けることができる」とされており、国は認定製品について、グリーン購入法上で配慮することが見込まれています。認定業者は、認定製品を使用するように努めることが求められます。
2. 小売・サービス業への判断基準
【判断基準】の内容
一度きりの使用のみで廃棄されるプラスチックを「特定プラスチック使用製品(ワンウェイプラスチック」」として定め、その使用削減が促進されます。また、国が定める「特定プラスチック使用製品多量提供業者」(令和3年11月末日現在、業者の規模は検討中)の取組みが判断基準に照らして著しく不十分であると認めるときは、排出抑制に関し必要な措置をとるべき旨の勧告が行われます。
勧告に従わなかった場合はその旨を公表され、それでも従わなかった場合には措置をとるべき旨の命令が発出されます。そして命令に違反した場合:50万円以下の罰金などが科せられるという重い規制となる見込みです。
3. 排出事業者への排出抑制判断基準
【判断基準】の内容
目的:プラスチック使用製品産業廃棄物の排出の抑制及び再資源化等を促進
検討事項:プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出事業者(小規模業者その他の政令で定める者は除外)の「判断基準」を定める
国が、多量排出事業者(令和3年11月末日現在検討中。政令で制定)の取組みが判断基準に照らして著しく不十分であると認めるときは、排出事業者へも排出抑制に関し必要な措置をとるべき旨の勧告が行われます。
勧告に従わなかった場合はその旨を公表され、それに従わない場合は措置をとるべき旨の命令を発出、命令に違反した場合:50万円以下の罰金などが科せられます。これらの規制は、特定プラスチック使用製品多量提供業者と同様とみてよいでしょう。なお、排出事業者等が再資源化計画を作成し、主務大臣が認定した場合、認定業者の廃棄物処理法の業許可を不要とする特例を整備することが見込まれています。
プラスチック資源循環促進法について、基本的な疑問点とその回答を以下にまとめていますので参考にしてください。
Q:国が指針や判断基準を策定する「環境配慮設計」は消費者が使用する状態の最終製品のみに適用されるのでしょうか?
A:令和3年11月末日現在「環境配慮設計」の指針は未確定です。現時点では最終製品に限定されていないので「中間材料も適用される」と考えておいた方がよいでしょう。
Q:排出事業者の判断基準については、リサイクルが不可能な廃プラスチックも含まれるのでしょうか?
A:令和3年11月末日現在「排出事業者」の判断基準は未確定です。産廃として処分せざるを得ない廃プラを除外することを議論していないことから、現段階では「リサイクルが不可能な廃プラスチックも含まれる」と考えておいた方がよいでしょう。事業者は、廃プラスチックを出さないよう又は削減出来るように工夫・検討すべきです。
Q:「自主回収・再資源化事業計画」が認定された場合の具体的なメリットはどのようなものでしょうか?
A:自主回収・再資源化事業計画の対象範囲の事業は、廃棄物処理法上の許可が必要となります。これにより、自治体ごとに異なる指導を受けたり、許可申請したりする手間が減り、効率的に事業を行いやすくなるというメリットがあります。
「プラスチック資源循環促進法」のような重要な法律が制定される際には、法律の公布や現行法の改正などをリアルタイムに把握し、かつその内容を詳しく理解することが事業者には求められます。そのようなニーズに対応できるソリューションとして、レクシスネクシスが提供するLexisNexis® ASONE(レクシスネクシス アズワン、以下ASONE)を以下にご紹介します。
ASONEは複数のモジュールで構成されたコンプライアンス遵守のためのワンストップ・プラットフォームです。
なお、2021年より、
が新たに加わりました。
このたびの「プラスチック資源循環促進法」のような重要な法律に関わる事項については、法規制情報をリアルタイムで調査・ウォッチする「法制政策情報」のモジュールが有効です。ASONEの「法政策情報」には「立法」「法令」「行政」「判例」「解説」などの幅広い法規制情報が項目別に網羅されており、その他にも全国1,700以上の自治体の条例が収録されています。
また、ユーザーに必要な情報だけを抽出した速報がメール配信されるので、法規制情報の内容理解だけでなく、情報収集の効率化にも役立ちます。この機会に、レクシスネクシス・ジャパンが提供するASONEの導入をぜひご検討ください。
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「プラスチック」という素材自体を規制する法律が誕生したことは、今やプラスチック対策が国家的な緊急課題であることを意味しています。令和4年に施行される「プラスチック資源循環促進法」は、関連メーカーへの設計指針、小売・サービスへのワンウェイ基準、排出事業者への排出抑制基準など、広範囲な規制を含む大規模な新しい環境法です。
プラスチックの製造・販売に関わる事業者は、同法の法的・社会的意義を明確に理解した上で対応する必要があることは言うまでもありません。
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