消費者は2年前、ChatGPTの登場によって生成AI 革命に触れることとなりました。その後、当社がローンチしたLexis+ AI に代表されるような 、法律専門家のために特別に訓練された 生成 AIソリューション...
企業内における法務部門では、社内弁護士による法律業務と、法務関連業務のオペレーション チームの2つの側面によって全体が構成されてい ます 。後者は、コラボレーションとワークフローの合理化を支援する ための...
弁護士は、クライアントに助言を提供するとき、ビジネス契約を ドラフト するとき、あるいは裁判所に提出する法的文書を作成するとき、法的調査の正確さと質を頼りにしなければなりません。法的データベースの検索結果が不正確であったり...
生成AI(人工知能)技術の普及は、企業のオフィスから酸素のほとんどを奪ってしまった かのように感じることがあります 。事実上すべての大手企業が、どのようにすれば 生成 AIツールを開発し 、 生成 AIツールを導入し...
法律事務所のリーダーたちは、法律分野向けに開発されたAIツールであるリーガルAIの採用を増やしているが、いかなる画期的な技術もそうであるように、克服しなければならない懐疑的な見方も 存在しています 。...
「コンプライアンス施策を成功させるには、どうすれば良いのか?」。企業コンプライアンスの重要性が社会全体に浸透した現在、そのようなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。多くの企業がコンプライアンス対策に取り組むなか、自社の“コンプライアンス施策の有効性”を正確に把握できていない企業は少なくありません。その結果、「自社の現状に適していない研修や形骸化したプログラムをコンプライアンス計画に組み込んで、せっかくの施策が失敗してしまう」ことは、数多くの企業に共通する課題として上がってきています。
2023年2月にレクシスネクシスで実施したウェビナー「コンプライアンス施策の失敗を防ぐ!大企業の事例から学ぶサーベイ活用&リスク特定のコツ」では、このようなコンプライアンス施策の失敗を防ぐためのヒントをご紹介いたしました。
講師はレクシスネクシス・ジャパン株式会社コンテンツソリューションズ部マネージャー/コンサルタントの八島心平です。豊富な企業コンプライアンスのサポート経験を元に、コンプライアンス施策を成功させるポイントや、「サーベイ(意識調査)」をキーワードとした大企業の成功事例、課題突破のアイディアなどをぜひご参考にしてください。
※本記事では、同ウェビナーの内容を紹介します。
レクシスネクシス・ジャパン株式会社 人事労務分野を中心とする企業法務向け書籍の企画編集や、コンプライアンス・ソリューションの企画・開発業務を経て、現職。レクシスネクシスでは階層ごとのコンプライアンス研修、国内/国外でのコンプライアンスサーベイ等を主担当領域としての顧客支援を行う。 |
――なぜ、コンプライアンス施策に失敗してしまう企業があるのでしょうか。
失敗の定義はいろいろありますが、ひとつ言えることとして、年間のコンプライアンス推進計画である『コンプライアンス・カレンダー』が十分に整備されていないと失敗の要因になり得ます。
私たちのお客様のリーディングカンパニーや上場企業の皆様は、ほぼ全社が『コンプライアンス・カレンダー』を作成していらっしゃいます。
逆に、明確な年間計画がなく、ルーティン化された研修メニューなどの施策を行っているだけの企業は、内在する課題と施策とのフィットが行われず、貴重なリソースが消費されるだけに終わってしまう傾向があります。
――多くの企業コンプライアンスの現場に携わっているからこそわかる、コンプライアンス施策に成功している企業の共通点を教えてください。
共通しているのは、「年間計画のPDCAを適切に回している」ことです。非常にベーシックなことを、しっかりと行っていらっしゃいます。“計画の策定(P)”“施策の実施(D)”“効果検証(C)”“抽出された課題に対する新たな施策の立案(A)”という各フェーズを回していくことが施策成功には重要です。
また、「年間計画のなかで各クオーター・各月間に行うべきタスク設定を詳細に行う」、「課題に対するリソース配分を適切に行う」という点も共通しています。
さらに、施策が成功している企業様のほとんどが、“効果検証(C)”に力を入れていらっしゃいます。当社としても、PDCAのなかでも特に「効果検証をしっかり行っているかどうか」という点が施策の成功と失敗を分ける分水嶺になると考えています。
――PDCAを有効に運用するために必要な要素や、施策の成功につなげるためのコツなどを教えてください。
非常に重要な要素である“効果検証”を行ううえで、施策効果を定点観測するために、多くの企業様が“コンプライアンス・サーベイ(意識調査)”という手法をとっていらっしゃいます。
このサーベイでは、従業員のコンプライアンス意識の水準や、ルールの認知・納得の度合いなどを調査します。年間計画のなかで、第3クオーターに調査実施とレビューを行って、そこで抽出された課題に対する次年度の計画を策定するケースが多いですね。
そして、コンプライアンス・サーベイは、「一度やって終わり」というわけではありません。定点観測の役割を持つ重要な施策ですから、経年比較が必須です。
また、経年比較をするうえで、「調査内容(調査・分析の軸)を踏襲するのか」「設問の一部を差し替えるのか」などについて毎年検討することも必要になります。
――コンプライアンス・サーベイを有効活用して成果を上げた事例を教えてください。
当社のコンプライアンス・サーベイをご活用いただいている多くのお客様のなかから、顕著な課題が見つかり、その課題に対する施策が効果的だった2社の事例をご紹介します。
A社様(上場企業)、業種/インフラ系、従業員数/約7000名(連結)
B社様(非上場企業)、業種/IT系、従業員数/約2000名
サーベイで抽出される課題は企業ごとに異なりますので、お客様と膝を突き合わせながら、それぞれのお客様に最適な施策を考えていきました。
コンプライアンス・サーベイを毎年や隔年など定期的に実施すると、必ず課題が出てきます。課題は、その時々の組織の状況によって、前回調査と同じ場合も異なる場合もあります。
それはこの2社様についても同様ですが、最新のサーベイの調査結果では、現状の課題とその対象層を改めて特定することができました。
――具体的に、どのような成果が得られましたか?
A社様は、「30代以下の一般層で、自己効力感と帰属意識が低い」という結果が出ました。これまでの経年比較でも同じような傾向がありましたが、最新の調査結果では低下傾向がより顕著でした。
B社様では、「勤続年数10年以上の主任~管理職層で、行動規範の理解度が低下し、内部通報制度の認知度が低い」という傾向がわかりました。
このように調査結果を経年比較することで、現状での課題と対象層を把握できたことが一つの大きな成果です。
――それらの最新の調査結果を分析して、どのような施策を行ったのですか?
A社様はインフラに携わる“高信頼性組織”としての側面があり、「仕事でミスが許されない」というプレッシャーが非常に大きいという特性があります。
そこで、そこで、対象層の自己効力感、帰属意識を高めるために、人事領域でのホットトピックでもある「心理的安全性」の向上を目的としたワークを実施しました。
B社様については、「なぜ行動規範の理解度が低いのか」という点についてご担当者の方々とディスカッションを重ね、現場側の業務方針と、上位指針である行動規範とに乖離があるのではとの意見を共有するに至りました。
そして、リーディングカンパニー十数社の行動規範を比較して、法令への対応も確認しながら新たな行動規範を策定。さらに、経営トップから「改定を行う」というメッセージを全従業員に向けて発信しました。
A社様は人材に対する研修という“ソフト面”での対策で、B社様は行動規範の策定という“ハード面”での対策というちがいはありますが、どちらもサーベイで抽出された現状の課題を解決するための施策になっています。
――この2社様のコンプライアンス・サーベイの実施に関わって、施策としての成功ポイントは何だと考えますか?
施策の効果測定は次回のサーベイではっきり見えてくるものではありますが、A社様のご担当者の方からは「『対象層からの意見出しが活発になり、帰属意識が高まった』という肌感がある」とおっしゃっていただいています。
B社様の場合は、行動規範の変更というわかりやすい施策を行いましたので、次回のサーベイで施策の効果が明確になると思います。
両社様に共通して言える成功ポイントは、「ルーティンの施策を行うのではなく、その時々に出てくる現状の課題に対して適切な施策を検討・実施した」ということです。
コンプライアンス・サーベイは、それを実施することが目的ではありません。あくまでも、コンプライアンスの年間計画を進めていくための“起点”であり、PDCAの効果検証フェーズにおける重要な取り組みです。
この2社様も、サーベイを行ったことで、ご担当者の方々はもちろん、経営陣の皆様も納得できる課題が見えてきました。全社的に納得が得られた課題に対して、カスタマイズしてつくった個社に最適な施策を打ったことは、両社様の年間計画における一つの成功体験になったと言えると私たちは考えています。
――「サーベイはアンケートと同じで、簡単にできる」というイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、実際にコンプライアンス・サーベイを行ううえでむずかしいことはありますか?
通常の個別アンケートと、コンプライアンス・サーベイには大きなちがいがあります。
通常の個別アンケートは、実施されている企業も多いと思います。たとえば、ハラスメントの有無の実態調査や、内部通報窓口の利用率の調査など、すでに決まっているテーマについて調べるためのものです。
アンケートも重要な施策ではありますが、取得したい結果はすでに定まっていますので、それに対する調査項目を作成して実施するだけのものだといえます。
一方で、コンプライアンス・サーベイには“リスク検知のむずかしさ”があります。
コンプライアンス・サーベイは自社のコンプライアンス水準を測定する調査ですから、「その水準を測定するために、リスクを検知できる具体的な調査項目や設問、さらにそれらの裏にある分析軸をどう設定したらよいか」ということが大きな壁になります。
コンプライアンスに対する意識水準の“定量的測定”と、各企業固有の規制やルールの理解度などの“定性的測定”の両方を掛け合わせることで、はじめて「個々の企業のリスクが検知できる調査事項」をつくることができます。
この「リスク検知のための調査軸を、どうつくるか」という部分が、通常の個別アンケートとコンプライアンス・サーベイの最大のちがいです。
――レクシスネクシスのコンプライアンス・サーベイの手法を教えてください。
私たちが展開しているコンプライアンス・サーベイの特徴は、「定量的な部分と定性的な部分の両方を取得できる調査軸を持って、当該組織のリスク検知を行っていく」という点です。
定量的な部分を数値化するために、“コンプライアンス感度”という調査軸(分析軸)を設定しています。たとえば、インテグリティや心理的安全性などに関する意識について、当社のサーベイをご活用いただいている多くの企業様との定量的な比較が可能です。
そして、定性的な部分については、「個々の企業において守るべき社内ルールがどれだけ理解されているか」ということを取得できる設問を個別に作成します。具体的には、行動規範やコンプライアンスマニュアルなどをベースに、一つ一つ設問をつくっていきます。
そして、上図のように定量・定性の両軸を掛け合わせてリスクを検知するのが大きな特徴です。
――コンプライアンス・サーベイを実施する際、企業のご担当者の方にとって重要なポイントは何ですか?
ご担当者様が留意すべきことは多々ありますが、まずは「何を調査軸に据えるのか」をしっかり検討することが重要です。
社内のすべての関係者の方にご回答いただく部署横断的プロジェクトになることが多いため、全社的に納得を得られるような調査軸(分析軸)の設定も大切なポイントになります。
自社内で調査軸をつくることもできますが、通常業務を抱えるなかでコンプライアンス・サーベイを運用していくことは容易ではないため、サーベイを提供するベンダーにアウトソーシングする企業が多いのが実情です。
調査軸はベンダーによって異なるため、全社的に納得を得られる調査軸を持っているベンダーを探すことも非常に重要です。
――コンサルタントとして数々の企業様のコンプライアンス案件に関わってきたと思いますが、レクシスネクシスのコンプライアンス・サーベイに対する皆様のご反応はいかがですか?
おかげさまで多くの企業様にご活用いただいて、特に「定量と定性の両軸で、調査・分析・リスク検知を行う」点を非常にご評価いただいています。
そして、内部ルールの理解に関する定性の部分の設問は、個々の企業様の行動規範やコンプライアンスマニュアルに合わせてカスタマイズしてつくるため、「経年比較にとても役立つ」というご評価も多いですね。
設問を「変えない」「一部差し換える」といったカスタマイズが自由にできますので、「経年比較を行ううえで、自社固有の調査軸(調査項目・設問)を有効資産として使える」というお声もいただいています。
また、「すでに信頼性が高い設問を用いる定量的な部分に加えて、カスタマイズもできる」という点をご評価いただくことも多いですね。
その一方で、コンプライアンス・サーベイは大規模な全社プロジェクトになるため、自動化などで「より簡単に実施できないか」というご意見も頂戴しています。
――そのようなご意見にお応えするために、コンプライアンス・サーベイをより多くの方にご利用いただけるような製品パッケージを開発中ですよね。その製品版のコンプライアンス・サーベイは、どのようなものになるのですか?
個々のお客様の行動規範やコンプライアンスマニュアルをベースに作成していた“ルール理解”に関する設問についても、定量的に測定できるような設計にしています。
“モデル企業行動規範”を作成して、それに紐づく設問をご用意することによって、オンラインでのサーベイの回答、データ集計、そしてダッシュボード上での回答結果の可視化などをすべて自動化できます。
当社のフラッグシップ製品『LexisNexis® ASONE』のUI(ユーザーインターフェイス)を用いたBIツールとしてご活用いただける画期的な製品になる予定です。
――より簡単にサーベイを行えるようになるんですね?
そうです。ご存じの方も多いと思いますが、2023年3月期以降の有価証券報告書には人的資本に関する情報の開示が義務化されます。それによって、企業価値が非財務情報で推し量られ、その充実度が重要視される時代がやってくるはずです。
そして、ステークホルダーに対するコンプライアンス意識・倫理の水準の開示が、より強く求められるようになっていくと考えられます。
企業価値を向上させる情報開示のためにも、自社のコンプライアンス水準を自動的にアウトプットできる当製品をご活用いただければと思います。
レクシスネクシスでは、法務コンプライアンスの様々な課題を解決する為のソリューション、『LexisNexis® ASONE』を提供しております。ASONEは機能別に複数のモジュールで構成されています。
2023年5月、レクシスネクシスが多くの企業に実施した「コンプライアンス・サーベイ」のノウハウを製品パッケージ化した新たなモジュール「LexisNexis® ASONE コンプライアンス・サーベイ(コンプライアンス分析ツール)」を正式リリース。ASONEコンプライアンス・サーベイは自社のリスク特定や分析、サーベイ施策の工数削減など、多くのシーンで効果を発揮します。