「法令を知らなかった」は通用しない

―法改正の“見逃し”が企業リスクに直結する今、田中が動いた。
LN製造株式会社のコンプライアンス強化とASONE導入事例

「知らなかった」が許されない時代。法改正の頻度と複雑さが増す中、LN製造株式会社のコンプライアンス担当・田中（仮名）は、全社の法令対応に立ちはだかる“見えないリスク”と日々向き合ってきた。これは、現場任せの限界に気づいた一人の担当者が組織を動かし、仕組みを構築するまでの軌跡である。

■プロローグ：ある役員の不安

「我々の会社は、本当にすべての法改正に対応できているのか？」

ある日、LN製造株式会社のコンプライアンス担当役員がふと漏らした一言が、社内に静かな波紋を広げた。
製造から販売まで手がけるLN製造は、「顧客第一」「品質第一」を社是に掲げ、町工場から従業員3,000人を超える上場企業へと成長を遂げた。長年にわたり築き上げた信頼を武器に、大手メーカーから中小企業まで幅広い顧客を抱える優良企業である。
だが、製造業であるがゆえに、製品安全・労働安全衛生・輸出入管理など、遵守すべき法令は多岐にわたる。しかも近年は、法改正の頻度も複雑さも増す一方で、現場任せの運用が常態化していた。
そんな中、「コンプライアンス倒産」という言葉が、経済誌や一般紙を賑わせるようになった。昭和の時代には想像もつかなかったその言葉が、今や日常的に目に飛び込んでくる。記事を見るたび役員の胸には漠然とした不安が広がっていた。

■きっかけ：動き出す田中

その声を最初に受け止めたのが、コンプライアンスグループの田中だった。
「“おそらく大丈夫”では、もう済まされない。今のままでは正確な報告すらできない。」
役員の一言が、田中の胸に火をつけた。これまでにも社内で法令対応整備に取り組んできた田中だったが、改めて“全社の実態”を把握する必要性を痛感する。田中はすぐに全社アンケートを実施し、各部門の対応状況を洗い出した。だが、結果は想像以上に深刻だった。

「これは見えていなかっただけで、すでに危機は始まっていたのだ。」

■現実：見えてきた“ほころび”・田中の覚悟

• 「すべての法改正を把握している」と答えた部門は、わずか8％。
• 「対応できている」と答えた部門も、半数に届かない。

田中が報告したアンケート結果に、会議室は静まり返った。
属人化、情報のばらつき、見落とし、それは偶然ではなく、組織に染みついた“構造的なリスク”だった。
自由記述には、こんな声もあった。
「情報が遅い」
「誰が見ているのか分からない」
「引き継ぎがうまくいかず、対応が漏れた」

田中は思った。これは誰かの責任ではない。だが、誰かが動かなければならない。
その“誰か”は自分だ、と。

■本格始動：プロジェクトチーム発足

「法令遵守は、企業活動の根幹です。知らなかったでは済まされません。」
田中の声は静かだが、強かった。アンケート結果は、まさに危機そのものだった。

「このままでは重大な見落としが起きます。全社で対応する仕組みが必要です。」

一瞬の沈黙のあと、役員が言った。
「すぐに取り組んでくれ。」

こうして、法務・コンプライアンス・各事業部門の代表が集う全社横断のプロジェクトチームが始動した。田中の提案は制度改革ではなく、組織の“見えないリスク”に立ち向かう、静かな挑戦だった。

■選択：ASONEとの出会い

「必要なのは、“見逃さない仕組み”だ。」

田中は、複数の情報提供サービスを比較検討しながらつぶやいた。
法改正の波は止まらない。属人化に頼る体制では、いずれ限界が来る。だからこそ仕組みで守るしかない。そう確信していた。その中で、レクシスネクシス社の「ASONE法政策情報」が田中の目に留まった。

• カスタマイズされた法改正情報を自動配信
• アラート機能で必要な人に即時通知
• 平易な表現で現場も理解しやすい
• 立法段階から行政通知までを網羅

「これなら現場も動ける。」

田中は確信を持って、導入を提案した。

■導入：変わり始めた現場

ASONE法政策情報の導入から、社内の風景は確実に変わり始めた。

• 自部門に必要とする法令改正だけを網羅的に収集
• 各部門長や担当者は、それらの情報を自部門に展開

ある部門長はこう語った。
「通知が来るから、見逃しがなくなった。何より、“自分たちで探さなくていい”のがありがたい。これまでは、情報を拾うだけで手いっぱいだった。」

現場の声が、田中の背中を押した。仕組みが変われば人も動く。その手応えが確かにあった。

■成果：表れた変化

導入から数ヶ月。社内には目に見える変化が現れ始めていた。

• 法改正対応にかかる確認作業が従来より約40％削減
• 属人化のリスクは大幅に低減

何より、現場からは「コンプライアンスは他人事ではない。自分事だ」という声が聞こえ始めていた。

「ASONEは、単なる“情報ツール”ではない。
企業の”法令対応力”そのものを支えるインフラだ。」

田中のその言葉には、確かな手応えと、次の一手への覚悟が込められていた。

-----次回予告------

全社的な法令対応の仕組みが動き出し、一定の成果が見え始めた今、田中は、工場に目を向け始めていた。業務マニュアル、現場の慣習、法改正とのズレ。 明確な課題はまだ見えていない。それでも田中は、工場には“何か”があると感じていた。
次の舞台は、工場。田中の新たな挑戦が、今、始まろうとしている。