Use this button to switch between dark and light mode.

共通意識で守る企業倫理 | コンプライアンス担当田中の軌跡#4

By: 法務部コンプライアンス担当 田中

「法令を知らなかった」は通用しない

―法改正の“見逃し”が企業リスクに直結する今、田中が動いた。
LN製造株式会社のコンプライアンス強化とASONE導入事例

「知らなかった」が許されない時代。法改正の頻度と複雑さが増す中、LN製造株式会社のコンプライアンス担当・田中(仮名)は、全社の法令対応に立ちはだかる“見えないリスク”と日々向き合ってきた。これは、現場任せの限界に気づいた一人の担当者が組織を動かし、仕組みを構築するまでの軌跡である。
<<第一回はこちら         <<第二回はこちら  <<第三回はこちら

■プロローグ:金曜日の警告

「田中さん、ちょっといいですか」

金曜日の定時間際。帰り支度をしていた田中の肩を、米国駐在から一時帰国中の営業部長が叩いた。顔色が優れない。
「実は…気になることがあって」
二人は誰もいない会議室に移動した。

「競合他社が、うちの価格情報を知っているんです」

田中の手が止まった。
「先月のシカゴでの商談です。相手が『御社はXXドルで提示するつもりでしょう』と。あまりに正確すぎる。まるで社内資料を見たかのようで」
田中の背筋に冷たいものが走った。
「それだけじゃありません」声を潜めた。

「現地の取引先が『業界の価格協定でもあるんじゃないか』と冗談めかして聞いてきたんです」
田中は息を呑んだ。価格カルテル―米国反トラスト法違反という重大なリスクだ。
「もちろんそんなことはしていません。ただ、現地のメンバーが業界団体の懇親会などで競合と接触する機会は多いので、もし軽率な会話をしていたら…」
米国司法省の調査、巨額の罰金、経営陣の引責ー田中の脳裏に、最悪のシナリオが頭をよぎった。
「この話は誰かに?」
「まだ誰にも。田中さんなら、どうすべきか検討いただけると思って」
田中は深く息を吐いた。

問題の本質は、『調査』だけでは解決できない。

教育だ。

■きっかけ:IR部門からの圧力

週明け月曜日。
上司でもあるコンプライアンス部長が、深刻な表情で資料を差し出した。
「IR部門から要請が来ている。次の統合報告書に『グローバルコンプライアンス教育・受講率100%』と掲載したいそうだ」
田中は資料を覗き込み、現状の受講率を確認した。日本国内95%、海外拠点平均62%。
「無理でしょう・・・」
別の資料を広げた。
「米国では情報漏洩と競争法違反のリスク、中国では個人情報保護法違反の懸念、ベトナムでは贈収賄に該当しかねない軽率な行動の報告。
各拠点から危険な兆候が次々と上がってきている」
田中は頷いた。

「問題の本質は何だと思う?」
「教育です」田中は答えた。
「受講率だけでなく、『理解度』も鍵だ」

■現実:崩れる教材

その日の午後、田中は部下の遠藤とホワイトボードの前にいた。
「現状の教材の課題を整理してみました」 遠藤がペンを走らせる。

課題1:欧米企業向けの内容

  • ケーススタディが全て欧米企業。
    日本企業特有のリスク(系列取引、下請法等)が含まれない。

課題2:言語の壁

  • 対応言語は英語・中国語・スペイン語のみ。
    ベトナム・タイ・インドの現地スタッフは英語で受講し、理解度が著しく低い。

課題3:資産として残らない構造

  • サブスクリプション利用により、教材やナレッジが自社に蓄積されない。

田中は腕を組んだ。
「これではIR部門の要請に応えられない。いや、それ以前に社員を守れない

遠藤はさらに続ける。
「中国拠点から『顧客データを日本に転送する際、何か手続きが必要か』と質問が来ています」
田中の表情が険しくなった。
「それは中国の個人情報保護法における越境データ転送規制の対象だ。教材で扱われていないのか?」
「教材では扱われていません。現地メンバーもリスクだと理解していません

田中は立ち上がった。「教材を見直す。社長に掛け合ってきます」

■覚悟:社長室の決断

翌日、田中は社長室にいた。
「社長、グローバルコンプライアンス教育の抜本的見直しを提案します」
社長は眼鏡越しに田中を見つめた。
「IR部門からの要請は聞いている。しかし、それは教材を変えなくても達成できるのでは?」
田中は覚悟を決めた。

「できません。いえ、やるべきではありません」

社長の表情が変わった。
「説明してください」
「現在、米国で情報漏洩と競争法違反のリスクが浮上しています。中国では個人情報保護法違反の懸念。ベトナムでは贈収賄リスクの報告」
「それが教材の問題だと?」
「はい」田中は断言した。

「現地スタッフは、何がリスクかを理解していません。教材が彼らの言語で提供されておらず、彼らに合った具体的な事例も含まれていないからです」

「IR報告書に『受講率100%』と書いても、実態が伴わなければ意味がありません」
沈黙していた社長が、前のめりに口を開いた。
「では、どうする?」

「レクシスネクシス・ジャパンのeラーニングを導入します。現状の範囲内の予算で実現可能です」

■解決:レクシスネクシスの提案

翌週、田中と遠藤はレクシスネクシス・ジャパンのオフィスを訪れた。
応対した営業担当は開口一番「御社の課題は、多くのグローバル展開する日本企業が抱えています」と、言いながら、資料を投影した。

LN製造が直面するリスク

  1. 域外適用される各国法規制への対応不足
  2. 現地スタッフの理解度不足
  3. 日本本社と海外拠点のコンプライアンス意識の乖離
  4. 教材が資産として残らない IR要請への対応困難

「我々のeラーニングソリューションは、これらを全て解決できます」

レクシスネクシスの提案

  1. 完全現地語対応 LN製造が進出している主要15言語に対応
  2. 日本企業向けカスタマイズ
  3. 日本企業特有のリスク(下請法等)も提供可能 アジア・新興国での具体的事例も掲載可能 ※レクシスネクシスは米国企業だが日本でグローバルの日本企業向けに作成したコンテンツを提供
  4. 豊富なナレッジベース
  5. レクシスネクシスが持つグローバルナレッジを活用 競争法、贈収賄防止法、個人情報保護法等の主要テーマを完備
  6. 柔軟なカスタマイズ
  7. 規制が厳しい国(米国、EU、中国等)向けに追加コンテンツ 類似業界の事例も掲載可能
  8. システムではなく、コンテンツ提供
  9. 自社で追加・修正が可能。ナレッジの蓄積

田中は資料を食い入るように見た。
「我々はすでに法務情報データベースを持っています。それを教育コンテンツに応用しているので、安心してご利用いただけます」

「一つだけ、条件があります。」田中が口を開いた。
「米国での競争法リスク、中国での個人情報保護法リスク、ベトナムでの贈収賄リスク。これらに特化した緊急教材を作成できますか?」
「可能です。我々のナレッジベースに該当する情報があります。御社向けにカスタマイズして提供可能です」

「契約をお願いします」

■導入:具体化する教材

しばらくして、最初のドラフトが届いた。

件名:緊急教材ドラフト(米国競争法)
ケーススタディ:製造業A社の事例

A社の米国駐在員が、業界団体の懇親会で競合他社の営業担当と会話。
「最近の価格競争は厳しいですね」
「そうですね。どこかが先陣を切って値上げしてくれれば…」
この会話が司法省に情報提供され、調査開始。
結果、A社には違法性がないと判断されたが、調査対応に1年、コスト2億円を要した。

田中は息を呑んだ。
これは、自社が直面しうる状況そのものだった。
「遠藤さん、見てください。これです。これが必要だったんです・・・!」
遠藤も興奮していた。
「中国の個人情報保護法の教材も届きました。
越境データ転送の規制、完璧に説明されています」
「ベトナムの贈収賄は?」
「明日の午前中に納品される予定です」
田中は安堵の息を漏らした。

■成長:変わり始めた現場

導入から数カ月後。
LN製造の全拠点に、新しいeラーニング教材が導入された。
田中はイギリス支店のマネージャーとビデオ会議をしていた。
「このコンテンツは素晴らしい!スタッフたちが『自分たちの話だ』と言っています。今までの教材は、アメリカ企業の事例ばかりで自分事にできなかったようです」

同様の報告が、各拠点から続々と寄せられた。

  • 中国拠点
      「個人情報保護法の教材、非常に分かりやすい。現地採用の担当者が『越境データ転送はリスクだと初めて理解した』と言っていました」
  • ベトナム拠点
      「ベトナム語の教材があるのが嬉しい」
  • インド拠点
  • 「理解度テストの正答率が、50%から85%に上がりました」

「受講開始1週間で82%。2週間で96%に達する見込みです」 遠藤の報告に田中は深く頷いた。

「IR部門の要請にも応えられる」

-----エピローグ------

その後、発行されたLN製造の統合報告書の一節には、こう記されていた。
「グローバルコンプライアンス教育の刷新」
当社は2025年、全世界15拠点・現地語対応の統一コンプライアンス教育を実施。受講率98%、理解度テスト平均正答率88%を達成。 教育の継続的な改善が可能な体制を構築しており、全従業員が共通の「コンプライアンス言語」を持ち、国境を越えて同じ価値観で行動できる組織となっている。

田中は遠藤と共に、その報告書を見つめていた。
「遠藤さん、ここまで来ましたね」
「はい。でも、これはゴールじゃないんですよね」
「そう。スタートです。世界は変わり続ける。規制も、リスクも。我々は学び続けなければならない」

教育は組織を変える。

一人ひとりが正しい知識を持ち、正しく行動できるようになれば、組織は強くなる。

LN製造は、その一歩を踏み出した。
国境を越え、言語を越え、文化を越えて、共通の言語で「品質第一、信頼を未来まで」を築く組織として。

10/30開催ウェビナーはこちら

製品ページはこちら

Tags: